術後癒着とは

術後癒着は腸閉塞や不妊症などの合併症や
再手術時の時間延長の原因となることがあります

術後癒着は高頻度に発生

腹部切開手術を受けた患者の93%に、癒着が起きるとの報告がある。1)
初回帝王切開手術の46~65%2-5)、婦人科開腹手術の55~100%6)に、癒着が起こるとの報告がある。

術後癒着に伴う合併症

  • 小腸閉塞の75%7)
  • 不妊症の15-20%8)
  • 慢性骨盤痛の48%8)
    が、術後癒着によるものである。

術後癒着はリスクを増加

  • 手術時間の延長
  • 組織との識別と到達が困難になる
  • 臓器損傷のリスクが増加
  • 腹腔鏡下手術が困難になる
  • 不妊症、慢性骨盤痛、腸閉塞の原因となる
  • 子宮、卵管、卵巣の手術時の視野を妨げる
  • 術後放射線療法による腸炎のリスクが高まる

術後癒着の形成とセプラフィルム

癒着形成過程とセプラフィルムによる癒着防止

  術後癒着の形成 セプラフィルムを使用した場合
1日目

組織損傷後、炎症反応が惹起され、3時間後にはフィブリンが析出する。また、マクロファージや線維芽細胞の遊走も始まる。

セプラフィルムは損傷組織表面で物理的なバリアとして作用し、癒着形成を抑制する。この間、損傷部の治癒は正常に進行する。

4日目

フィブリンの吸収不全があると繊維素性の癒着が形成され、血管新生や線維芽細胞の増殖が進む。まれに多核白血球がみられる。

損傷組織表面の浸潤細胞の主体はマクロファージである。大量に析出したフィブリンは、セプラフィルムにより対側の組織と遮断される。

7日目

線維芽細胞は増殖し、癒着の器質化はさらに進行し、強固な癒着となっていく。

マクロファージは7日までに腹膜表層を構成する中皮細胞に置き換わり、損傷組織表面を覆うようになる。

8日目以降

通常、7日を過ぎて新しい癒着が形成されることは少ない。

7日には損傷組織表面は中皮細胞で完全に覆われる。セプラフィルムは吸収されるが、通常7日を過ぎて新しい癒着が形成されることは少ない。

フィブリン,マクロファージ,線維芽細胞,中皮細胞

参考文献

1) Menzies D, et al., Ann R Coll Surg Engl, 72(1): 60-63, 1990.

2) Lyell DJ, et al., Obstet Gynecol, 106(2): 275-280, 2005.

3) Myers SA, et al., J Reprod Med, 50(9):659-662, 2005.

4) 伏木 弘ほか, 産婦人科の実際, 62(3): 437-440, 2013.

5) Morales KJ, et al., Am J Obstet Gynecol, 196(5): 461. e1-6, 2007.

6) Diamond MP, In:Sciarra, JJ, ed, Gynecology and Obstetrics. Philadelphia, Harper and Row, 1-23, 1988.

7) Scovill WA, In: Cameron JL ed, Current surgical therapy. St.Louis, Mosby, 100-104, 1995.

8) Stovall TG, J Reprod Med, 34(5): 345-348, 1989.